新潟古本屋日記

新潟市の古本屋、フィッシュ・オンのブログです。
古本屋をはじめてはやいものでもう10年。色々と移転しながら現在は沼垂テラス商店街で営業中です。ブログでは入荷した古本、おすすめ本、イベント出店の情報など更新しています。
ちゃーびら祭最終日に山之口獏を読む。
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    本日は「ヌッタリちゃーびら祭(さい)」最終日。

    気合を入れて沖縄本を推しましたが、突然のスコール(のようなどしゃ降り)に外の本は3時すぎには撤収。

    なんだか不完全燃焼なので、フィッシュ・オンでは来週も沖縄本コーナーを継続していきます。

     

    雨の後はお客さんもひいて、ちょっとヒマになったので自ら沖縄本を愉しむ。

    選んだのは『日本の詩歌20(中公文庫)』。

    沖縄出身の詩人、山之口獏が収録されている(他には中野重治、小野十三郎、高橋新吉)。

    とりあえず山之口獏がどんな詩人かは、彼の処女詩集『思辯の苑』の冒頭におかれた佐藤春夫の詩を読むとわかりよい。

     

    家はもたぬが正直で愛するに足る青年だ

    金にはならぬらしいが詩もつくつてゐる。

    南方の孤島から来て

    東京でうろついてゐる。風見たいに。

    その男の詩は

    枝に鳴る風見たいに自然だ しみじみと生活の季節を示し

    単純で深味のあるものと思ふ。

    誰か女房になつてやる奴はゐないか

    誰か詩集を出してやる人はゐないか

    (佐藤春夫「山之口獏の詩稿に寄す」)

     

    やはり佐藤春夫はいいなあ、とつぶやきそうになるが本日紹介したいのは山之口獏。

    山之口獏自身の「自己紹介」という詩を紹介する。

     

    自己紹介

     

    ここに寄り集つた諸氏よ

    先ほどから諸氏の位置に就て考へてゐるうちに

    考へてゐる僕の姿に僕は気がついたのであります

     

    僕ですか?

    これはまことに自惚れるやうですが

    びんぼうなのであります。

     

    と、山之口獏がどんな人間か、おおよそつかめたところで、この本の中で私が一番気に入った詩を紹介したい。

     

    鮪に鰯

     

    鮪の刺身が食いたくなったと

    人間みたいなことを女房が言った

    言われてみるとついぼくも人間めいて

    鮪の刺身を夢みかけるのだが

    死んでもよければ勝手に食えと

    ぼくは腹だちまぎれに言ったのだ

    女房はぷいと横むいてしまったのだが

    亭主も女房も鮪なのであって

    地球の上はみんな鮪なのだ

    鮪は原爆を憎み

    水爆にまた脅かされて

    腹立ちまぎれに現代を生きているのだ

    ある日ぼくは食膳をのぞいて

    ビキニの灰をかぶっていると言った

    女房は箸を逆さに持ちかえると

    焦げた鰯のその頭をこづいて

    火鉢の灰だとつぶやいたのだ

     

    途中で「原爆」や「水爆」に対して大上段にかまえるとみせかけてからの

    庶民の魚「鰯」と「火鉢の灰」という落差に思わずニヤリとさせられた。

    ジメジメした天気に「諷刺」という清涼感が心地よい。

     

     

     

     

     

     

     

     

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